長崎にいる龍馬の元に、京の出来事が逐一入ってくる。中岡慎太郎からである。ある日、
参政後藤象二郎が雨に濡れて来て、龍馬に助けを求めた。だが、煮え切らない土佐藩殿様山内容堂の態度に頭を
抱えた。この容堂の態度でどれ程の人が死んだか。武市半平太もその一人である。
龍馬はおりょうの膝枕で一晩考えた。妙案がある。それは、大政奉還である。将軍に政権を放棄してしまえ、
と持ちかける。早朝、艦艇で沖にいる土佐藩藩船夕顔丸に乗って、後藤と京へ行く。その時の妙案である。この話し
を海援隊仲間の文官の長岡謙吉、陸奥陽之助の二人に話した。
実はこの案は3年も前に二人の人物から聞いた話である。あの当時はこの案が世間に出れば嘲笑を買うし、
今だから成功する可能性がある。将軍慶喜次第である。二人の人物とは、勝海舟と大久保一翁である。どちらも
幕臣と言う点が面白い。
龍馬は後藤の前で長岡謙吉に草案を書かせた。
天下の政権を朝廷に奉還せしめ、政令よろしく朝廷より出づべき事
上下議政局を設け、議員を置きて、万機を参賛せしめ、万機よろしく公儀に決すべき事
有材の公卿・諸侯、及び天下の人材を顧問に備へ、官爵を賜ひ、従来有名無実の官を除くべき事
外国の交際、広く公儀を採り、至当の規約を立つべき事
古来の律令を折衷し、新たに大典を選定すべき事
海軍よろしく拡張すべき事
御親兵を置き、帝都を守衛せしむべき事
金銀貨物、よろしく外国と平均の法を設くべき事
龍馬のこの草案に、土佐藩家老の後藤象二郎がびっくりした。
それもそのはずだった。龍馬は外国の領事や商人に聞いていて、外国の閣議・政治の事まで知っていた。
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